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奈良南大会


世界食料デー 2017年度 プロジェクト報告


 コンゴ民主共和国

 

ハンガーゼロは、現地パートナー、ハンズオブラブ・コンゴと協力して、上カタンガ州のプエトで地域住民が主体的に進めるコミュニティ開発(*VOC)の取り組みを支援しています。また、首都キンシャサと第二都市であるルブンバシで子ども達の給食支援活動を行っています。

 

ルブンバシでは地元教会と協力し、130 人の子ども達内孤児 10 に毎週、豆乳やビタミン入りビスケットを提供しています。ほとんどの子ども達が非常に厳しい貧困家庭の子どもで、給食プログラム開始当初は、深刻な栄養失調を抱えた子ども達もいました。この給食プログラムに子ども達を連れてくる親に対しては、農業を始めるように勧め励ましています。首都キンシャサでは孤児院と協力して 112 人の子ども達ストリートチルドレン 50 人、捨て子 26 人、孤児 36 を支援しています。紛争が多いコンゴでは、孤児だけでなく、夫が亡くなり突然生計を立てる術を失った母親にやむなく棄てられた子ども達や家に食べ物がないなどの理由で家出して都会に来てストリートチルドレンとなった子ども達がたくさんいます。そんな子ども達が身を寄せている孤児院で、主食ウガリとキャッサバの葉の煮ものなどの給食を提供しています。

 

孤児院では、ストリートチルドレンの保護もしています。傷ついた心と体のケアをして、可能であれば家族の元に帰すことを目指しています。しかし、実際には、親元に戻っても家には食べものも生計を立てる手段もないという現実に直面し、路上で物乞いをする生活に逆戻りするか、犯罪や売春へと追いやられてしまうため、なかなか親元に帰すことができずにいます。そんな中、HOLC を通して給食支援を始めてから、5人の子ども達が親元に帰り、家族で幸せに生活できるようになりました。

 

 その 5 人の中にナオミという少女がいました。ナオミはストリートチルドレンだった 11 歳の時に乱暴に遭い、人に心を閉ざしてしまいました。しかし、2012 年に孤児院に引き取られてからは、孤児院の中の人間関係により対人関係の恐怖が徐々に薄れ、遂には孤児院の薦めで服飾訓練校へ通えるまでになりました。彼女は訓練を通じて女性と子どものドレスを作れるようになり、自分で生計を立てられるようになりました。その後家族の元へと帰ることができ、今では結婚して子どもまでいます。自分で生計を立てられるスキルを身につけたことで、親元に帰ってからも再び路上生活に戻ることを考えなくてすみました。今では責任ある大人として周りにも認められて生きているナオミは、辛かった過去を振り返り、給食のおかげで週 2 回は食べることができたことがとても嬉しかったと感謝しています。

 

VOC=Vision Of Community

 

 

 


 

フィリピン共和国

 

ハンガーゼロは、現地パートナー、ハンズ・オブ・ラブ・フィリピン(HOLPFI)を通して、ミンドロ島の原住民マンヤン/タウヴィット族のコミュニティであるマイ地区で、地域住民が主体的に進めるコミュニティ開発(VOC)の取り組みを支援しています。

 

2016 年に実施されたリーダーシップトレーニングの中で、村の人達は 10 年後どんな風になっていたいかをコミュニティのビジョン(VOC)として描きました。そして、どの課題から取り組むのか、村人達が優先順位をつけていきました。最優先課題の一つとして挙げられたのが子どもの教育でした。「子ども達のために村に学校を!」というビジョンを掲げて取り組み始めた地域リーダーを HOLPFI スタッフがコーディネートしてきたことにより、地域のリーダーに強い使命感と動機付けが生まれました。その結果、諦めることなく何度も教育省やバランガイ事務所村役場に足を運んで話し合いを続け、遂に教育省より教師を派遣して貰う約束をとりつけました。そして、その条件であった2つの教室作りを住民達だけで完成させ、マイ地区で学校が始まりました。学校が始まると親達が続々と子どもを学校に通わせるようになり、1 ヶ月後には教師をもう 1 名派遣してもらい、教師 2 名体制で授業が行われるようになりました。教育環境を整えるため、ソーラー発電機の設置を支援し、村に初めて電気が点きました。また、教師達の居住環境改善のために、給水設備も整備しました。

 

こうしてマイ地区で村人達の念願の学校が始まりましたが、正式に学校として認可されるには、土地や建物の安全性、最低生徒数の確保など政府が定める規格に適合しなければなりません。地域リーダー達が新たな校舎建設用の土地の取得に向けて動き始め、候補地が見つかりました。しかし、既得権を持っている人達にトラブルなく移転してもらうための立ち退き料を捻出するだけの経済力がコミュニティには未だありません。それでも、忍耐強く寄り添う HOLPFI スタッフのファシリテーションのおかげで、地域リーダー達は諦めず、立ち退き料を政府に援助してもらう可能性を探り始めました。

 

2018 3 月には、地域リーダーの要請に基づき、ファイナンスマネージメントの学びを実施しました。5  名の代表が村を離れ、HOLPFI の事務所で寝泊まりして4日間のトレーニングに参加しました。今後、コミュニティ訪問時に HOLPFI スタッフが学びの理解と実践のフォローアップを行い、受講者が他の住民に教えることができるようになることを目指しています。困難に遭っても諦めず、一つずつ手順を追って自分達で解決に向かうという体験を通して地域リーダー達は、自分達のビジョンに向かって主体的にコミュニティ開発 (VOC)の取り組みを進めていく力を身に付けています。ハンガーゼロは、現地パートナーHOLPFI を通して地域の人々に寄り添い、この取り組みを支援していきます。


VOC=Vision Of Community